俳句の上達法

「上手に成る道筋たしかにあり。師によらず、弟子に依らず、流によらず、器によらず、
畢竟句数多く吐き出だしたるものの、昨日の我に飽ける人こそ上手にはなれり。」
(森川許六「篇突」)
    俳諧に上達する方法は、たしかにあります。
    それは、先生によらず、弟子たちによらず、流派によらず、その人の天分によらず、
    結局、多作しても、昨日の自分に満足しない、そうして、つねに前進する人こそが
    俳諧の上達がはやいのです。

                     (石寒太「芭蕉の言葉に学ぶ 俳句のつくり方」)

久保田万太郎の言葉(小島政二郎著「俳句の天才ー久保田万太郎」 )
    藤の花を見ていないよその人が、あなたの作った俳句を読んで、
    あなたと同じように藤の花を見ているように感じるような俳句。
    さらに、この藤の花を見てあなたが感じた気持も一緒に、読む人に
    感じさせた方が、より本当の俳句に近くなるのです。

久保田万太郎の言葉(成瀬櫻桃子 著「久保田万太郎の俳句」 )

  芝居なら見終わって観客が、俳句なら読み終わって
  読者が「ああそうか、成るほど」とうなずいてくれるようでなければならない。

  俳句は作るものではなく、浮かぶものだ。

自分を詠うー作句のポイント(藤田湘子著「入門 俳句の表現」)
   ・流行遅れではないか
   ・倫理がらみのフレーズには限界
   ・驚かぬ把握、驚かぬ発想をいくら繰り返しても、それはマンネリ。
   ・擬人法は悪句の根源
   ・実感を伴わない「口先俳句」にならぬよう
   ・「俳句は、おおむねふだんのさりげない行住坐臥の中から、
     ふと、きらめく詩因を見いだして作られるのがふつう。」
   ・「俳句に理屈をちらつかせるのは危険、へたをすると月並に堕してしまう。
     純粋な感覚、感動を大切にしたい」
   ・「胸中に煌々たる詩心を保て」
       「緩み心、惰性、やっつけ気分、場当たり的」心情を拒絶する。
   ・対象が見えるように作れ(客観写生)

石田波郷(主催誌「鶴」)

  「句を美しくしようと思ふな。文学的修飾をしようと思ふな。自然が響き応ふる心をふるひ起こせよ。」

      (森澄雄著「俳句に学ぶ」より引用)

大輪靖宏(「俳句の基本と応用」)

 俳句上達の秘訣はあるか

  1.当たり前のことを取り上げていないか(新しい感覚や情景)
  2.誰もがするような表現、ものの見方をしていないか
  3.説明や感想を付け加えていないか
  4.意味が重複していないか
  5.詩的内容を持っているか(詩的な意味の広がりがあるか)
  6.材料の強さや面白さで作っていないか
  7.具体性を欠く言葉を使っていないか
  8.表現を放棄していないか
  9.品位を落としていないか
  10.文法的・意味的な誤りを犯していないか
  11.理屈を述べていないか
  12.独りよがりになっていないか(読者に通じるか)
  13.使われた語が適切か
  14.リズミカルな読み方ができるよう句調を整えたか
  15.あまりにも俳句らしい俳句ばかりを作っていないか
  16.俳句が苦の種になっていないか

 新しさの方向性(「俳句の独自性はどこにあるか」)

  ・俳句は滑稽の面でもっと広がりがある
      現代は真面目な俳句が主流を占めている風潮がある
  ・古歌・成句などの利用
      秋来ぬと目にさや豆の太りかな     大伴大江丸
  ・会話言葉の活用
      なんと今日の暑さはと石の塵を吹く     上島鬼貫
  ・オノマトペ(擬音語、擬声語、擬態語の総称)の活用
      大根を水くしゃくしゃにして洗う     虚子
  ・ドラマ的な俳句
      行く春や選者を恨む歌の主     蕪村
      青梅に眉集めたる美人かな     蕪村
  ・詞書と融和する面白さ
      夕立や田を見めぐりの神ならば     其角