9.打消し推量の「じ」「まじ」

意味

  「じ)」ー打消し推量・打消し意志

  打消し推量ー二人称・三人称主語の時ー「・・・ないだろう」「・・・ない」

  打消し意志ー一人称主語の時ー「・・・するつもりはない」「・・・まい」

 

  「まじ」ー打消し推量・打消し意志・不適当な事態・不可能の推量

  打消し推量ー「きっと・・・ないだろう」「・・・ないにちがいない」「・・・はずがない」「・・・まい」

  打消し意志ー「決して・・・ないつもりである」「・・・するつもりはない」「・・・まい」

  不適当な事態ー「・・・てはならない」「・・・ないほうがよい」

  不可能の推量ー「・・・できそうもない」

 

「じ)」の活用

  未然形:〇 ず
  連用形:〇 て
  終止形:じ 
  連体形:じ とき
  已然形:じ ど
  命令形:〇

「まじ」の活用1

  未然形:〇 ず
  連用形:まじく て
  終止形:まじ 
  連体形:まじき とき
  已然形:まじけれ ど
  命令形:〇

「まじ」の活用2

  未然形:〇 ず
  連用形:まじかり て
  終止形:〇 
  連体形:まじかる とき
  已然形:〇 ど
  命令形:〇

 

接続

  「じ」は、未然形に接続

  「まじ」は、ラ変は連体形に接続

  「まじ」は、ラ変以外は活用語の終止形に接続

  (「まじ」の上には、ウ段音が来る)

 

「じ」の例句

  馬方は知ら時雨の大井川   松尾芭蕉(知らないだろう:打消し推量)

  鶏頭の芽を踏まじ鶏頭の芽を踏ま   岸本尚毅(踏まないつもりだ:打消し意志)

  神棚の灯は怠ら蚕時   与謝蕪村(怠ることはないだろう:打消し推量)

  冬に負け割りてはくらふ獄の飯   秋元不死男(負けるつもりはない:打消し意志)

 

「まじ」の例句

  春鴉野に悪声は嘆くまじ   河野南畦(嘆くことはないだろう:打消し推量)

  原爆許すまじ蟹かつかつと瓦礫歩む   金子兜太(決して許さないつもりだ:打消し意志)

  踏むまじき沙羅の落下のひとつふたつ   日野草城(踏んではならない:不適当な事態)

  美しく残れる雪を踏むまじく   高浜虚子(決して踏むつもりはない:打消し意志)

  優曇華やしづかなる代は復とまじ   中村草田男(来ないに違いない:打消し推量)

  あせるまじ冬木を切れば芯の紅   香西照雄(あせる気はない:打消し意志)

  鶯や雨やむまじき旅ごろも   水原秋櫻子(やみそうにない:打消し推量)