蕉風の俳句

実感をともなう俳句(蕉風探究期)

  芭蕉野分して盥に雨を聞くよかな   芭蕉(最初の芭蕉庵)

  霰聞くやこの身はもとの古柏   芭蕉(最初の芭蕉庵焼失後の2度目の芭蕉庵)

 

季語と体験との確認と、古典の伝統的情趣からの脱却(蕉風前期)

  野ざらしを心に風の泌む身かな   芭蕉(「野ざらし紀行」)

  古池や蛙飛び込む水の音   芭蕉(「蛙合」)

  草臥れて宿借るかる頃や藤の花   芭蕉(「笈の小文」)

  蛸壺やはかなき夢を夏の月   芭蕉(「笈の小文」)

  旅人と我が名呼ばれん初時雨   芭蕉(「更科紀行」)

  吹き飛ばす石は浅間の野分かな   芭蕉(「更科紀行」)

不易流行の思想(蕉風中期)

  草の戸も住み代わる世ぞ雛の家   芭蕉(「奥の細道」)

  夏草や兵どもが夢の跡   芭蕉(「奥の細道」)

  閑さや岩にしみ入る蝉の声   芭蕉(「奥の細道」)

  荒海や佐渡によこたふ天の川   芭蕉(「奥の細道」)

  一つ家に遊女も寝たり萩と月   芭蕉(「奥の細道」)

  塚も動け我が泣く声は秋の風   芭蕉(「奥の細道」)

  初時雨猿も小蓑をほしげなり   芭蕉(「猿蓑」)

  病む雁の夜寒に落ちて旅寝かな   芭蕉(「猿蓑」)

「軽み」の俳諧?「高く心を悟りて俗に帰る」(蕉風後期)

  年々や猿に着せたる猿の面   芭蕉(「真蹟懐紙」)

  秋風に折れて悲しき桑の杖   芭蕉(「笈日記」)

  春雨や蜂の巣つたふ屋根の漏り   芭蕉(「炭俵」)

  梅が香にのつと日の出る山路哉   芭蕉(「炭俵」)