2.完了の「つ」「ぬ」「り」「たり」

意味

  「つ」ー完了・・・棄つ(すつ)・見つ・据ゑつ・語りつ・告げつ・隔てつ

  「ぬ」ー完了・・・往ぬ(いぬ)・来ぬ・行きぬ・過ぎぬ・近づきぬ・帰りぬ・風吹きぬ

           絶えぬ・消えぬ・隠れぬ

  「り」ー完了と存続・・・せり・咲けり

  「たり」ー完了・存続・・・書きたり・死にたり・過ぎたり

 

「つ」の活用(下二段)

  未然形:て ず
  連用形:て て
  終止形:つ 
  連体形:つる とき
  已然形:つれ ど
  命令形:てよ

「ぬ」の活用(ナ変)

  未然形:な ず
  連用形:に て
  終止形:ぬ 
  連体形:ぬる とき
  已然形:ぬれ ど
  命令形:ね

「り」の活用(ラ変)

  未然形:ら ず
  連用形:り て
  終止形:り 
  連体形:る とき
  已然形:れ ど
  命令形:れ

「たり」の活用(ラ変)

  未然形:たら ず
  連用形:たり て
  終止形:たり 
  連体形:たる とき
  已然形:たれ ど
  命令形:たれ

 

接続

  つ・ぬ・たりは、動詞の連用形に接続

  「り」は、四段の命令形(已然系)・サ変の未然形に接続する

 

「つ」の例句

  蒲公英の座を焦がしむ飾焚く   山口青邨(きっと焦がしてしまうだろう)

  鴉の子尻なき尻を振りけり   飯島晴子(振ったなあ)

  火の奥に牡丹崩るるさまを見   加藤楸邨(見た)

  茗荷汁したたかに召し給ひてよ   会津八一(召しあがってください)

 

「ぬ」の例句

  金魚玉とり落としば舗道の花   波多野爽波(取り落としてしまったならば)

  永き日のにはとり柵を越えけり   芝不器男(越えたなあ)

  十六夜の水にこゑして人過ぎ   馬場移公子(過ぎてしまった)

  鵯のこぼし去りぬる実の赤き   与謝蕪村(こぼし去った)

  老いぬればあたため酒も猪口一つ   高浜虚子(老いてしまったので)

 

「り」の例句

  滄浪の水澄めば葱を洗うべし   正岡子規(澄んでしまったら)

  花なしとも君病めとも知らでば来し   河東碧梧桐(病んでいるとも)

  菊咲け陶淵明の菊咲け   山口青邨(咲いている)

  逢へ辺(へ)の蛍の息のやはらかに   矢島渚男(逢った)

 

「たり」の例句

  万緑や友を焼く火も澄みたらむ   行方克己(澄んでいるのだろう)

  ことしより堅気のセルをたりけり   久保田万太郎(着ているのだなあ)

  春を病み松の根つ子も見飽きたり   山口青邨(見飽きてしまった)

  渦潮へものを投げたる掌(て)のひらき   波多野爽波(投げた)

  死にたれば人来て大根煮(た)き肇はじむ   下村槐太(死んでしまったところ)