4.使役・尊敬の「す」「さす」「しむ」

意味

  「す・さす・しむ」ー使役・尊敬

  使役(・・・に・・・させる)ー死なす/老いさす・寝ねさせよ/光らしむ

  尊敬(・・・なさる、・・・される)ー光ら給ふ

 

「す」の活用(下二段)

  未然形:せ ず
  連用形:せ て
  終止形:す 
  連体形:する とき
  已然形:すれ ど
  命令形:せよ

「さす」の活用(下二段)

  未然形:させ ず
  連用形:させ て
  終止形:さす 
  連体形:さする とき
  已然形:さすれ ど
  命令形:させよ

「しむ」の活用(下二段)

  未然形:しめ ず
  連用形:しめ て
  終止形:しむ 
  連体形:しむる とき
  已然形:しむれ ど
  命令形:しめよ

接続

  「す」は、四段・ラ変・ナ変の動詞の未然形に接続

  「さす」は、「四段・ラ変・ナ変」以外の動詞の未然形に接続

  「すぃむ」は、すべての動詞の未然形に接続

 

「す」の例句

  天瓜粉まへは打たず逃げまはる   長谷川双魚(打たせないで:使役)

  身のうちに山を澄まて枯野行く   福田甲子男(澄ませてう:使役)

  うすうすと光ら給ひお身拭   田中王城(お光になって:尊敬)

  穀象といふ虫をりて妻泣か   山口波津女(泣かせる:使役)

  雪眼鏡みづいろに嶺々沈まする   大野林火(沈ませることだなあ:使役)

「さす」の例句

  深き息かけて凍蝶凍てさせず   三好潤子(凍らせない:使役)

  野を焼くに火を付けさせて貰ひけり   松瀬青々(付けさせて:使役)

  寝ねさせよ白むまで咳く咳地獄   及川貞(寝させてくれ:使役)

「しむ」の例句

  夕映の甘藍蝶を去らしめず   長谷川双魚(去らせない:使役)

  父老いしめ母老いしめて田水湧く   高橋悦男(老いさせて:使役)

  玉虫を拳ゆるめて光らしむ   渋谷道(光らせる:使役)

  寒木に人をつれきて凭(よ)らしむる   石田波郷(凭らさせることだなあ:使役)

  音楽を降らしめよ夥(おびただしき)しき蝶に   藤田湘子(降らせよ:使役)