物仕立て(一句一章)

「発句は、只金(こがね)を打ちのベたる様に作すべし」(向井去来著「旅寝論」)
    発句(俳句)というものは、ただただ黄金を打ちのべたように、きれめなく一句全体を
    緊密につくりあげなければならないのです。
    一句一章・一物仕立て(いちもつじたて)と呼ばれる表現法
      一句の中に切れがなく、上五から下五まで一気に詠み流す作り方です。
      一物仕立ての句は、初心者が作ると、とかく説明や理屈になってしまいます。
      ですから初心者は、はじめは「配合」の句からはいった方がいいようです。
      そして、ある程度鍛錬してから、一物仕立てをつくると、比較的に成功しやすい
      といわれます。
    一句一章の例句:
      冬菊のまとふはおのがひかりのみ    水原秋桜子
      まさをなる空よりしだれざくらかな     富安風生

     (石寒太「芭蕉の言葉に学ぶ 俳句のつくり方」)

一句一章の芭蕉の名句
    辛崎の松は花より朧にて   (野ざらし紀行)
    生きながら一つに氷る海鼠かな   (続別座敷)
    よく見れば薺花咲く垣根かな   (続虚栗)
    木のもとに汁も膾も桜かな   (ひさご)
    梅が香にのっと日の出る山路かな   (すみだはら)
    白菊の目に立てて見る塵もなし   (菊の塵)
    ひやひやと壁をふまへて昼寝かな   (笈日記)